(1)単なる多角化のためのM&A多角化は通常何らかのシナジーの存在を前提としておこなわれるが、純粋に多角化のための多角化を主目的としたM&Aも多い。
その典型がアメリカで1960年代にみられたコングロ型企業による異業種M&Aである。
コングロによるM&Aの主目的が、事業のシナジーではなく、次に述べる表面的な財務指標の改善にあったため、ポートフォリオ分散投資と同じ効果しかないと批判された。
この種の分散投資は、何も経営者を介在させなくても、投資家の段階で十分できるというのがその根拠であった。
そしてほとんどのコングロ型企業が経営的には失敗に終わった。
しかし、コングロは別にしても、現実にシナジーの存在がはっきりしない、多角化のためのM&Aが多いことも事実である。
(2)表箇上の財務数値改善のためのM&Aファンダメンタルな価値創出ではなく、投資家向けの表面的な財務指標の改善を主目的としたM&Aである。
これも代表例は1960年代のコングロによるM&Aで、M&Aにより一時的にEPSの成長率が高まるような錯覚を利用して、当時のM&Aブーム、高株価ブームの主役となった。
しかし、やがてそのからくりに投資家が気づき、結果的に60年代のあだ花に終わった。
(3)余剰資金の有効投資本業の成熟にともない再投資機会が減少してキャッシュフローが余ってくると、増配や自社株取得によって株主に資本を還元するか、新規分野への再投資をおこなうかの選択を迫られる。
理論上は前者を選択すべきケースとなるが、ゴーイング・コンサーンとして縮小の道を選ぶことは経営者にとって困難な場合が多い。
特にアメリカでは余剰資金を抱えている企業はTOBの候補になってしまうことがある。
このような状況では比較的確実な事業に速やかに大規模な投資をおこなう必要があり、現存する優良企業の買収が最も現実的な選択になりやすい。
1980年代におけるアメリカのM&Aの最大の特色は、成熟した大企業による経営内容の優良な企業の買収であった。
(4)参入障壁を乗り越える手段としてのM&A業種によっては、免許や規制、制度的な要因によって、新しい企業の設立や参入が制限ないし禁止されていることがある。
こうした場合、規模の拡大を短期間に実現する現実的な手段として、しばしば既存企業の買収がおこなわれる。
回アメリカにおけるM&Aアメリカでは、M&A活動に関して長期的なサイクルが観測される。
図201は19世紀末から100年間におけるM&A活動のサイクルを示している。
第1波は19世紀の終わりから20世紀の初めにかけての約10年間であり、第2波は1920年代の株式ブームの時期に訪れた。
第3は、やはり株式相場が長期上昇を続けた60年代の後半にみられた。
そして、株式相場が堅調であった80年代を通して4番目のM&A活動の盛り上がりがみられた。
さらに90年代以降5番目のブームが進行した。
M&A活動のピークはいずれも景気が過熱した株式ブームの時期に対応しており、産業構造が大きく変わる節目にあたっているといわれている。
川第1次ブーム(18951905年頃)南北戦争後の長いスタグフレーションのあと迎えた景気拡大期に起こった。
約10年の聞にアメリカの全製造業における雇用者と資産額でみて約15%を巻き込んだM&Aブームであった。
アメリカ産業史上でみれば、時あたかも西部のフロンテイア開拓がほぼ終了し、大陸横断鉄道網や電信電話網の完成をもってアメリカ圏内が単一の金融市場として統合された時期にあたる。
ようやく工業国家として台頭してきたアメリカにおいて、多くの基礎産業分野で、全国に無数に存在した中小企業を大手が水平統合したのが特色である。
このため、この時期のM&Aは、独占のためのM&A(Me「ge「Fo「Monopoy)とも呼ばれる。
現在でもアメリカを代表する大製造業はこの時期に成立したものが多い。
代表的な企業をあげれば、USX(1日USスチール)、スタンダード・オイル(現在のエクソン)、GE、ウェステイング・ハウス、ユナイテツド・フルーツ、イーストマン・コダック、アメリカン・キャン、アメリカン・タバコ、デュポン、PPGなどである。
第1次M&Aブームは1903年、1904年の株式相場の暴落をもって鎮静化した。
しかし、これら一連の巨大企業の成立によって、独占の問題が従来もっぱら同業者の談合や協定の規制を主目的としていたシャーマン法だけではカバーしきれないことが明らかになった。
そして、1911年に最高裁がスタンダード・オイル・トラストとアメリカン・タバコ・トラストに分割命令を下したのを契機に、1914年には「クレイトン法」の制定とあわせて、FTC(連邦取引委員会)が発足し、独占禁止問題は新しい段階に入った。
(2)第2次ブーム(1)920年代)未曾有の株式ブームの中で起こった。
約1万の企業が合併・買収された。
第2次ブームは、銀行、電力、ガスなどの公益性の強い産業の持株会社を柱とした業界の統合、再編成と、クレイトン法の盲点をついた製造業部門の垂直統合のためのM&Aが主体であった。
特に加工食品、化学工業、鉱山といった新しい分野がその中心であった。
ケネコツト(銅)、アナコンダ(銅)、アライド・ケミカル(化学)、ゼネラルミルズ(食品)、ゼネラルフーズ(食品)、クラフト(食品)、ゼネラル・モーターズ(自動車)などの大企業の基礎がこの時期に作られた。
第2次ブームは「寡占のためのM&A(Me「ge「Fo「Oigopoy)」と呼ばれることもある。
第2次ブームは1929年の株式大暴落で幕を閉じた。
(3)第3次ブーム第3次ブームはアメリカ経済の長期繁栄と、1920年代以来の株式ブームが続いた1960年代に起こった。
この時期のM&Aの最大の特色は、従来独禁法が対象とした水平統合、垂直統合のいずれにも属さない、異業種合併が中心となったことである。
60年代を通じて約2万5、000の企業が買収され、とりわけ1967年から69年だけで、約万の企業が買収された。
全体の約50%はコングロマリットと呼ばれる新しいタイプの企業群によるものであった。
コングロによるM&Aの特色は、株価の高い企業が高いPE「を武器に、事業面であまり関係のない分野の低PE「企業に対して、株式の交換によって次々とTOBをかけ、雪だるま式に急成長を遂げる点にあった。
このため、第3次ブームは成長のためのM&A(Me「ge「fo「G「owth)と呼ばれることもある。
(4)第4次ブーム第4次ブームは1980年代に起こった。
この時期のM&Aに関しては、次のような特色が指摘できる。
@M&A活動があらゆる業種に拡大。
事業の大がかりなリストラクチャリングを目的とした各分野の大企業を巻き込み、金額の大きいM&A(メガディールと呼ばれる)が多数みられた。
M&Aの総額も、1980年代半ばから80年代後半にかけては、年間2、000億一2、500億ドルの高水準が続いた。
A敵対的買収の増加(表202)。
特にメガデイールの中には敵対的買収、またはそれがきっかけになったものが多かった。
第3次ブームの敵対的買収では、(i主)取引金額が100万ドルを超えるM&Aを集計したもの。
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